突然会話が途切れたと思ったら、じいっと見つめられた。
見つめられる、というか、まじまじと正面から顔を眺められる感じで、これはいくら相手が剣心だからといっても―――いや、剣心だからこそ、恥ずかしい。
「・・・・・・なに?どうかしたの?」
無言の視線に耐えかねて、訊いてみる。すると剣心は首を傾げて心底不思議そうに、「いや、どうしてだろうなと思って」と答えた。
質問に、殆ど質問で返されて。その間やはり彼の視線はわたしの顔に向けられたままで。落ち着かない気恥ずかしさに肩をすくめながら、再び「だから、
何が?」と尋ねる。
剣心は、喉の奥でうーんと唸って―――つん、と指の先でわたしの顎のあたりに触れた。
「どうして、こんなに可愛いのでござるか?」
質問に、更に質問を重ねられた。
そしてわたしの頬は真っ赤になった。
「・・・・・・剣心」
「うん」
「そういうことは、質問するんじゃなくて、普通に言って」
だってあなたはきっとこの問いに答えなんか求めていない。
それに、こんなことを質問という形で口にするのは、ずるい。
赤くなりながらも、精一杯目に力をいれて睨んでやると、剣心は子供のような素直さで「わかった」と言って頷く。
小さく顎をつついた指で、今度はそっと頬に触れられる。
「可愛い」
・・・・・・しまった。
こんなの、じいっと見つめられながら大真面目な顔で口にされたら、嬉しすぎて恥ずかしすぎて倒れそうになるじゃないの。
ありがとう、と。やっとの思いで紡いだ声は、かろうじて聞き取れる程度の音量だった。
「え、なんと言ったのでござるか?」と、わざとらしく訊いてくるのがなんとも憎らしい。その問いに答えるかわりに、えいっとばかりに抱きついて、ぎゅっと
目を閉じながら口づけてやった。
それを待っていたかのように抱きしめ返してくる剣心の腕と、深くなる接吻にくらくらしながら、急速に麻痺してゆく頭でぼんやりと考える。
どうして、こんなにも大好きなのかしら。
どこまで、このひとのことを好きになってゆくのかしら。
答えはとても単純。
理由なんて必要ない。
きっとどこまでも限りなく、好きになってゆく。
了
2016.11.06
モドル。