キャンディー








        「飴をね、瓶とか袋とかに入れておくでしょ?」
        「うん」
        「それを、あったかいところに置いておいたら、溶けるでしょ?」
        「溶けるでござるな」
        「飴がとけて、いくつもあったのが全部くっついて、ひとつになっちゃうでしょ?」
        「なるでござるな」
        「わたしたちも、今にそんなふうになっちゃうんじゃないかしら・・・・・・って。時々心配になるの」




        腕のなかに収まったまま、かねてよりの懸念を口にしてみる。
        いつからか、あなたはわたしを「抱っこしていないと安眠できない」という習慣が身についてしまった。
        それはわたしも同様で、あなたの体温にくるまれて眠るのが大好きになってしまった。
        今もまさにそんな感じに、布団のなかぴったりくっついて、眠りの波が寄せてくるのをふたりで待っている。


        あなたは、枕の上の頭を動かして、首を傾げるような仕草をしてみせた。
        「それに何か問題があるでござるか?」
        ・・・・・・なんというか、目からうろこの潔い返答だった。


        「・・・・・・それもそうね」
        「そうでござろう?」
        むしろそうなりたいものでござるな、と言いながら、剣心はわたしの額に口づけを落とした。
        「不便じゃない?」
        「でも、ずっとこうしていられるでござるよ」
        「それもそうね」
        「そうでござろう?」



        甘い時間の余韻をそのままに、抱き合ってくっついてあたためあっていたら、いつかふたりで溶けて境目がまじりあってなくなって、ひとつになれるのかも
        しれない。
        ひなたの陽の光に溶かされた、瓶のなかの飴みたいに。



        「朝起きたら、溶けていないかしら」
        「今にきっと、溶けるでござるよ」



        そのためには、もっとあったかくして、もっとぴったりくっつかなくては。
        ふたり同時にそう思ったのか、同時にぎゅうっと、抱き合う腕に力がこもって。それが可笑しくて、ふたりで笑った。






        たくさん愛し合って、あたためあって、ふたりがとけてひとつになって。
        いつか、美味しく甘い飴になれますように。












        了。





                                                                                     2018.06.01





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