ロージー











        「やっぱり、剣心に似てるみたい」
        剣路がこの世に生まれてからもうすぐ半年。
        明るい色の髪の毛がほよほよと伸びてきて、睫が長くなり目がぱっちりし、顔立ちがはっきりしてきた。
        「ってことは、剣心も赤ちゃんのとき、こんな感じだったのかしら?」
        剣路を腕に抱いて、俺に寄り添う君が微笑んだ。
        「んー、見てみたかったなぁ、このくらいちっちゃかった頃の剣心。きっと可愛かったんでしょうね」
        「だったら拙者は、その頃に薫殿に抱っこしてもらいたかったでござるよ」
        その言葉に、君は目を丸くしたあと、ぷっと吹き出す。
        「あらまぁ、お父さんは甘えん坊ですねー」
        まるで母親につられたように、剣路もきゃーと笑い声を上げた。
        「知らなかったでござるか?拙者、かなりの甘えん坊でござるよ?」
        「あら、そうなの?」
        「うん、薫殿にして欲しいこととか、実は沢山あって怖いくらいでござるし」
        わざと、真面目くさった顔でそう言ってみると、君は微笑んだまま「どんなおねだり?」と調子を合わせてくれる。
        「生まれたときからずっと、抱きしめていて欲しかった、とか」
        「うーん、それは今からじゃちょっと難しいわねぇ」
        「こうしている今も、抱きしめさせて欲しい、とか」
        「あらあら、それは大歓迎よ?」
        ことん、と。君が肩に体重を預けてくれる。
        君が抱いている剣路ごと、腕を回して、柔らかく抱き込んだ。
        こうしていると、あとからあとから愛しさが溢れてくる。
        それこそ、怖いくらいに。すべて伝えようとしても、きりがないくらいに。
        「癒されるって、こういう感じをいうのかしら」
        「・・・・・・え?」
        「ねー剣路、お父さんに抱っこされて、きもちいいですねー」
        見ると、君の腕の中、剣路がすやすやと寝息をたてていた。
        ほらね?と言うふうに、君が笑う。
        「・・・・・・むしろ、癒されているのはこっちでござるよ」
        幸福感に目を細めると、君は首を伸ばして左の頬に口づけてくれた。
        そう、身体に心に刻まれた傷を癒してくれるのは君だけ。
        君しか、いないから。






                                                     
        
 伝えればきりがない溢れるこの愛しさ怖い程たくさん





        了。






                                                                                         2018.07.20










        モドル。