昨日、夕暮れの街を肩を抱かれながら帰った。
「こんな時」だというのに、しっかり心臓はどきどきして、しっかり嬉しかった。
「・・・・・・薫殿、すまない」
そして今、あなたがぽろりと謝罪の言葉を口にした。
「何に対する謝罪なのかは、訊きたくないんだけど」
さらりと軽く受け流そうとしたのに、あなたは食い下がる。
「拙者をこの家に迎え入れたばかりに・・・・・・迷惑ばかりかけているでござるなぁ」
それは半ば、自分自身に言い聞かせているようで、ちょっと気にくわない。
だから、ぽかりと軽く頭を殴ってやった。
「・・・・・・痛いでござるよ」
「そうやってまた、自分ひとりで完結させるからよ」
また、という表現にあなたははっとする。
「剣心にいてほしいって、初めて会ったときにも言ったじゃない」
そして昨日、その願いに「ずっと」が加わったわけで。
「どうして迎え入れたとかどうして出逢ったかなんて、今更だわ」
決戦に備えての胴着姿の胸を、むん、と反らせる。
「あなたがなんて思おうと、わたしは一緒にいることをやめないもん!迷惑?」
いつの間にかわたしの声音は真剣になっていた。
あなたはその雰囲気にのまれたように、ふるふる無言で首を横に振る。
「・・・・・・人の過去にはこだわらないって、言ったの覚えてる?」
「・・・・・・ああ、勿論」
「今でも、そう思ってるんだからね」
そう、あなたの苦しい過去も愛した人のことも全部受け止めるって決めたから。
ぜんぶ全部ひっくるめて、わたしはあなたを愛していくの。
「薫殿は、強いでござるな」
「そうよ、頼もしいでしょ?」
そう、あなたを大好きという気持ちは揺らがない。
壊れそうもないこの想いがあるから、わたしは強くなれる。
「一緒にずっと・・・・・・でござったな」
ようやくあなたが笑顔を見せた。わたしも負けずに笑い返す。
昨日抱かれたあたたかな余韻が、まだ肩に残っている。
絶対に生き残ろう。
始まったばかりのふたりの日々を、決して終わらせたりはしない。
モドル。