シーソーの海




わたしが投げた言葉にあなたが返して。
海の波のように、寄せて返して、繰り返して。
「あっつぅい・・・・・・」
「離れるでござるか?」
「離れてもいいの?」
「嫌だ」
くすくすと笑いあう、触れ合うあなたの鼻先は少し汗で湿っている。
敷布の海にふたり絡み合ったまま沈んで。
夏の短い夜を惜しむように、ぴったりと身体をくっつけあって。
「眠い?」
「うん・・・・・・でももうちょっと」
行ったり来たり繰り返す、やさしく切ない感情。
もっとわたしを見てほしい。
もっとあなたを想っていたい。
終わりたくない、あなたと二人だけの時間。
海が消えないように、明日も明後日もこうして夜を過ごすとわかっているのに、それなのに。
やがて重くなる目蓋。
波の間隔が広がるように、発する言葉が途切れがちになる頃、あなたに唇をふさがれる。
「そろそろ、おやすみ」
あなたから注がれる、愛しい強さ。
このまま、想いがずっと醒めないように。
最後はわたしの言葉で、ふたりで眠りの深海へ落ちよう。
「おやすみなさい」
また、明日。





モドル。