エナジー




        ぱたぱたと揺れるリボン。

        風に流れる君の長い髪。

        「ねぇ」

        頬を赤くして、上目づかいに俺を見る


        「風が、強いから。ね?」


        脈絡のない言い訳、可愛らしい我儘。


        「しょうがないでござるなぁ」


        台詞と裏腹に、口元がほころぶのが自分でもわかる。


        きゅ、と手をつなぐ。


        「これでいい?」


        ふわりと君が笑って、おおきく頷く。


        気づいているよ、全て解っているよ。


        君が俺のことを、好きでいてくれていること。


        いつも同じ空気を吸い込む距離にいるのだから、心の声が聞こえないわけはない。


        じゃあ、俺が君のことどのくらい好きか、君も気づいてる?


        「雨が、降りそうでござるな」

        握った手に、力をこめてみる。

        いつも思っている、もっと特別に伝わらないかと。

        手を握って抱きしめて口づけて、痛い程絡みついて。

        足りない表現力のかわりに、そんなふうにしてばかりの俺を許して。

        だから、ねぇもっと我儘を言って。

        たとえば冷たい朝に寒いと言ってくれたなら、頬を寄せ合って暖かく口づける理由になる。

        死ぬまで一緒にいてと言ってくれたなら、喜んでそうするから。

        だからずっと俺に、君の我儘をきかせて。






      モドル。