天の川





        「外、出てみようか」

        漸く起きられるようになったあなたに誘われて、ふたりこっそり庭に出る。


        みんなで東京に帰る日もそう遠くはないだろう。


        その前に京都の夜空を目に焼き付けておこうと思い立ったから。


        薄い寝間着だと少し肌寒い。


        ふたり寄り添って見上げると、空の真ん中を横切る天の川。

        「きれーい・・・・・・」

        瞬きができないほど、綺麗だと思った。


        わたしが流した涙もすべて、この空を散りばめる星の粒になったのかもしれない。

        そんなふうに思ったのは、あなたが隣にいるから。


        「・・・・・・髪、伸びたでござるな」


        おろしたまま夜風に遊ばせた私の髪に、あなたがそっと触れた。


        気恥ずかしくて、小さく首をすくめる。


        「剣心と会って、それだけ経った証拠よ」


        するりと下りたあなたの指が、わたしの指に絡まる。


        あの日、別れを告げられて、さんざんに泣いたわたしと。


        全身全霊かけて戦って、傷つきながらも帰ってきたあなた。


        そんなふたりが、今ここで手をつないで星を見ている。


        ふたりでいること。


        それはありふれた様でいて、特別な奇跡。

        並んで見たこの空を、ずっとずっと忘れずにいよう。








        モドル。